肺炎は、風邪に似た症状から始まることもある一方、高齢者を中心に命に関わる状態へ進行することがある病気です。2026年10月時点で確認できる最新の年次資料である厚生労働省の「令和7(2025)年人口動態統計月報年計(概数)の概況」によると、2025年の肺炎による死亡者数は8万4,013人、人口10万人あたりの死亡率は70.4人でした。肺炎は日本の死因順位で第5位となっています。
ただし、この「死亡率」は、肺炎と診断された患者のうち何%が亡くなるかを示す数字ではありません。人口全体に対する死亡者数を表す統計上の指標です。年齢や性別による違い、誤嚥性肺炎との関係、都道府県別の傾向、2024年から2025年への変化を整理すると、肺炎による死亡リスクの実態と、日常生活で取り組める予防策が見えてきます。
【2026年最新】肺炎死亡率は人口10万人あたり70.4人、死亡者数は8万4,013人

肺炎死亡率を把握するうえで、まず確認したいのが厚生労働省の人口動態統計です。2025年の概数では、肺炎による死亡者数は8万4,013人で、全死亡者数158万9,489人の約5.3%を占めました。
死亡数だけでなく、人口10万人あたりの死亡率を併せて見ることが大切です。死亡数は人口規模の影響を受けますが、死亡率を使うことで、人口規模の違いをある程度そろえた比較ができます。ただし、年齢構成の違いはそのまま残るため、厳密な地域比較では年齢調整の有無にも注意が必要です。
2025年の肺炎死亡率は70.4人で、2024年の66.6人から3.8人上昇しました。死亡者数も8万176人から8万4,013人へと3,837人増加しています。死亡数の増加率は約4.8%です。
これらは2025年の概数に基づく数値です。厚生労働省は、2025年の確定数における死亡率について、2025年国勢調査の人口を用いて再計算するため、数値が変わる可能性があるとしています。したがって、70.4人は2026年時点で参照できる最新の概数であり、最終確定値とは区別して扱う必要があります。
【年齢別】肺炎死亡リスクはなぜ高齢者ほど高くなるのか
肺炎は子どもから成人まで、あらゆる年齢で発症します。しかし、日本呼吸器学会の一般向け解説では、肺炎の発症率は65歳を超えると上昇すると説明されています。高齢者の場合、肺炎そのものに加え、もともとの健康状態や併存疾患が予後に影響します。
加齢による免疫機能の変化年齢を重ねると、病原体に対する免疫反応や、気道に入った異物を排出する機能が低下することがあります。その結果、細菌やウイルスによる感染症を発症しやすくなり、肺炎が重症化する危険性も高まります。
特に注意したいのは、糖尿病、心疾患、腎疾患、脳血管疾患、慢性呼吸器疾患などを抱えている人です。複数の病気がある場合、肺炎による呼吸機能の低下や脱水などが、全身状態を悪化させる要因になります。
高齢者は典型的な症状が出ないこともある肺炎というと、高熱、激しい咳、黄色い痰などを想像しがちです。しかし、高齢者では明らかな発熱が見られず、食欲低下、強い倦怠感、活動量の低下、意識や反応の変化などが先に現れることがあります。
「年齢のせいで元気がない」「食事をあまり取らなくなった」と考えて様子を見ているうちに、受診が遅れることもあります。普段と比べて明らかに様子が違う場合には、発熱の有無だけで判断せず、早めに医療機関へ相談することが大切です。
年齢別の死亡率を見るときの注意点年齢別の死亡数と、肺炎にかかった人の死亡確率は別の指標です。人口動態統計で年齢別の死亡者数を比較する場合には、それぞれの年齢層の人口規模も考慮しなければなりません。
また、肺炎患者の予後は年齢だけで決まるわけではありません。発症時の重症度、原因となる病原体、治療開始までの時間、栄養状態、基礎疾患などによっても異なります。高齢だから必ず重症化するという意味ではなく、リスクを把握したうえで予防と早期対応を行うことが重要です。
【男女別・都道府県別】肺炎死亡率の違いを数字で比較
厚生労働省の2025年人口動態統計(概数)では、肺炎による死亡率に男女差が見られます。男性の死亡者数は4万8,727人、死亡率は人口10万人あたり84.0人でした。一方、女性は3万5,286人、57.5人です。
男性の死亡率は女性の約1.46倍に当たります。ただし、この数値だけで男女の生物学的な差や生活習慣の影響を断定することはできません。年齢構成、基礎疾患、喫煙歴など、さまざまな要因を考慮する必要があります。
都道府県別にも違いがあります。2025年の概数では、高知県の肺炎死亡率は人口10万人あたり112.5人、青森県は109.1人でした。一方、沖縄県は43.0人、宮城県は49.2人です。こうした差には、地域ごとの年齢構成や健康状態などが関係する可能性があります。
主な数値を比較すると、次のようになります。
| 項目 | 死亡者数 | 死亡率(人口10万人あたり) | 読み取り方 |
|---|---|---|---|
| 肺炎・2025年 | 8万4,013人 | 70.4人 | 死因順位は第5位 |
| 肺炎・2024年 | 8万176人 | 66.6人 | 2025年は死亡数・死亡率ともに上昇 |
| 男性・2025年 | 4万8,727人 | 84.0人 | 女性より死亡率が高い |
| 女性・2025年 | 3万5,286人 | 57.5人 | 男性より死亡率が低い |
| 誤嚥性肺炎・2025年 | 6万4,396人 | 53.9人 | 肺炎とは別の死因分類 |
| 高知県・2025年 | 718人 | 112.5人 | 都道府県別の比較例 |
| 青森県・2025年 | 1,240人 | 109.1人 | 都道府県別の比較例 |
| 沖縄県・2025年 | 616人 | 43.0人 | 都道府県別の比較例 |
出典:厚生労働省「令和7(2025)年人口動態統計月報年計(概数)の概況」。2025年の死亡率は概数であり、確定数では変更される可能性があります。
都道府県別の数値を見て、「死亡率が高い地域ほど医療体制が悪い」と判断するのは適切ではありません。高齢者の割合が高い地域では、年齢構成の影響によって粗死亡率が高くなる場合があります。地域間の医療成績を比較するには、年齢調整死亡率や疾病構成なども確認する必要があります。
【年次推移】肺炎死亡率は増加している?2024年から2025年の変化
肺炎死亡率の年次推移を確認すると、2025年は前年より死亡数・死亡率がともに上昇しました。死亡者数は3,837人増加し、人口10万人あたりの死亡率は66.6人から70.4人へ上がっています。
ただし、1年分の増加だけで、長期的に肺炎の危険性が一貫して高まっていると判断することはできません。感染症の流行状況、人口の年齢構成、基礎疾患を持つ人の割合、予防接種の普及状況など、複数の要因が関係するためです。
死因順位だけでは見えない統計上の変化厚生労働省の資料では、肺炎の死亡率の長期推移も示されています。ただし、統計上の分類や原死因の選択ルールが変更された時期には、実際の疾病状況だけでなく、集計方法の変更が数値に影響します。
例えば、2017年の肺炎死亡率の低下については、国際疾病分類ICD-10の2013年版に基づく原死因選択ルールの明確化が主な要因の一つとして説明されています。過去の数字を現在と比較する際には、こうした統計上の変更も踏まえる必要があります。
「人口10万人あたり70.4人」は何を意味するのか死亡率70.4人という数字は、2025年の人口10万人あたりの肺炎死亡者数を表します。肺炎にかかった人のうち70.4人が亡くなるという意味でも、個人が肺炎で死亡する確率が0.0704%だという意味でもありません。
肺炎患者の致死率を知りたい場合には、肺炎と診断された患者数と、そのうち亡くなった人の数を用いた別の統計が必要です。人口動態統計の死亡率と、患者の治療成績を示す致死率を混同しないことが、数字を正しく理解する第一歩です。
【誤嚥性肺炎の死亡率】通常の肺炎との違いと高齢者の注意点
2025年の誤嚥性肺炎による死亡者数は6万4,396人で、人口10万人あたりの死亡率は53.9人でした。死因順位では第6位です。肺炎が第5位であることと合わせて見ると、呼吸器感染症による死亡を考えるうえで、誤嚥性肺炎も無視できない問題であることが分かります。
誤嚥性肺炎はどのように起こるのか誤嚥性肺炎は、食べ物や飲み物、唾液、胃の内容物などが誤って気道に入り、細菌などによって肺に炎症が起こる病気です。嚥下機能が低下した高齢者や、脳卒中、認知症などの影響で飲み込む力や咳反射が弱くなった人に注意が必要です。
食事中にむせる人だけでなく、睡眠中などに唾液を少しずつ誤嚥する人もいます。本人が誤嚥に気づかない場合もあるため、むせの有無だけで危険性を判断することはできません。
誤嚥性肺炎の死亡率はどう読むべきか誤嚥性肺炎の人口10万人あたり53.9人という数値も、人口全体を分母とした死亡率です。誤嚥性肺炎を発症した患者の何%が亡くなるかを直接示すものではありません。
また、厚生労働省の死因統計では、通常の肺炎と誤嚥性肺炎は別の分類として集計されています。両者は発症の仕組みや予防の重点が異なるため、それぞれの数字を確認することが大切です。
通常の肺炎では、感染症対策や予防接種、基礎疾患の管理が重要になります。誤嚥性肺炎では、それらに加えて、口腔内の細菌を減らすケア、飲み込む機能の維持、食事姿勢の調整などが予防の中心になります。
【高齢者の肺炎予防】死亡リスクを減らすためにできること
肺炎による死亡を防ぐためには、発症そのものを予防するとともに、感染症にかかった際の重症化を防ぎ、症状が現れた段階で早く対応が必要です。日本呼吸器学会と厚生労働省の情報を踏まえると、日常生活で取り組みたい対策は大きく分けて次のとおりです。
1.肺炎球菌ワクチンなどの予防接種を確認する肺炎球菌は、肺炎の原因となる代表的な細菌の一つです。厚生労働省によると、2026年4月から高齢者の定期接種に用いる肺炎球菌ワクチンは、従来の23価肺炎球菌莢膜ポリサッカライドワクチン(PPSV23)から、20価肺炎球菌結合型ワクチン(PCV20)に変更されました。
2026年度の定期接種の対象は、65歳の人と、一定の心臓・腎臓・呼吸器機能の障害、またはHIVによる免疫機能障害がある60~64歳の人です。対象条件や接種方法、自己負担額などの詳細は、自治体やかかりつけ医に確認してください。
肺炎の原因は肺炎球菌だけではありません。インフルエンザや新型コロナウイルスなどの感染症をきっかけに肺炎を発症することもあるため、年齢や健康状態に応じて、これらの予防接種についても医師に相談するとよいでしょう。
2.口腔ケアと嚥下機能の維持を心がける誤嚥性肺炎の予防では、口の中を清潔に保つことが大切です。歯や歯ぐき、舌などに細菌が増えると、唾液と一緒に気道へ入り込む細菌の量が増える可能性があります。
毎日の歯磨き、舌や義歯の適切な手入れ、必要に応じた歯科受診を習慣にしましょう。食事中にむせることが増えた場合や、食べ物が飲み込みにくい場合には、医師や歯科医師、言語聴覚士などに相談し、嚥下機能を評価してもらうことも選択肢です。
食事の際には、できるだけ安定した姿勢で座り、急いで食べず、一口ずつ落ち着いて飲み込むことを意識します。飲み込みにくさがある場合は、自己判断で食形態を大きく変更するのではなく、専門家の助言を受けてください。
3.栄養状態を保ち、基礎疾患を管理する低栄養や脱水は、体力や感染症への抵抗力を損なう要因になります。十分な食事と水分を確保し、体重減少や食欲不振が続く場合には、医療機関へ相談が必要です。
糖尿病や心疾患、腎疾患、慢性呼吸器疾患などを抱えている場合は、日頃から治療を継続し、病状を安定させることも肺炎の重症化リスクを抑えるうえで役立ちます。喫煙している人は禁煙を検討し、手洗いなどの基本的な感染対策も継続しましょう。
4.高齢者の小さな変化を見逃さない咳や痰、発熱、息苦しさが続く場合は、医療機関を受診してください。特に、息苦しさが強い、呼吸が速い、胸に痛みがあるなどの症状が見られる場合は、早急な医療相談が必要です。呼吸困難が著しい、意識がはっきりしないといった症状がある場合は、救急要請を検討してください。
高齢者の場合、典型的な症状がそろわないことがあります。発熱がなくても、急に食べられなくなった、普段より反応が鈍い、急激に活動量が落ちたといった変化があれば、肺炎を含む病気の可能性を考えて早めに相談しましょう。
【プロの結論】肺炎死亡率の数字を正しく読み、早期予防につなげる
2026年時点で参照できる最新の年次統計では、2025年の肺炎死亡者数は8万4,013人、人口10万人あたりの死亡率は70.4人です。前年より死亡者数が増加し、肺炎は死因第5位を占めています。加えて、誤嚥性肺炎による死亡者数も6万4,396人に上ります。
こうした数字から読み取れるのは、肺炎が高齢者を中心に予防と早期対応を必要とする重要な健康課題だということです。一方、人口全体の死亡率だけで、個人の発症後の予後や、特定の地域の医療の質を判断することはできません。
肺炎の死亡リスクを考える際は、次の3点を判断基準にするとよいでしょう。
- 統計を読むとき:死亡者数、人口10万人あたりの死亡率、患者の致死率を区別し、概数と確定数も見分ける。
- 健康状態を確認するとき:年齢だけでなく、基礎疾患、栄養状態、嚥下機能、普段と比べた体調の変化にも目を向ける。
- 予防に取り組むとき:ワクチン接種の対象を確認し、口腔ケア、栄養管理、感染対策を継続するとともに、異変があれば早めに受診する。
肺炎は、すべての発症や死亡を防げるわけではありません。しかし、予防接種や日常的なケア、症状を見逃さない対応によって、リスクを減らせる場合があります。統計の数字を不安の材料として受け取るだけでなく、自分や家族の健康状態を見直し、実行できる対策につなげることが大切です。
【肺炎死亡率】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:2026年最新の肺炎死亡率はどのくらいですか?
A1:厚生労働省の2025年人口動態統計(概数)では、肺炎による死亡者数は8万4,013人、人口10万人あたりの死亡率は70.4人です。2024年の死亡者数8万176人、死亡率66.6人から上昇しました。
Q2:肺炎は日本人の死因順位で何位ですか?
A2:2025年の概数では第5位です。なお、誤嚥性肺炎は別の死因分類として集計され、こちらは第6位となっています。
Q3:肺炎の死亡率は高齢者ほど高いのですか?
A3:高齢者は肺炎の発症率が高く、免疫機能や嚥下機能の低下、基礎疾患などによって重症化しやすくなります。ただし、個人の予後は年齢だけでなく、健康状態や治療開始のタイミングなどにも左右されます。
Q4:男性と女性では肺炎死亡率に違いがありますか?
A4:2025年の概数では、男性は人口10万人あたり84.0人、女性は57.5人で、男性の死亡率が高くなっています。ただし、この差には年齢構成や健康状態など複数の要因が関係するため、数字だけで原因を断定することはできません。
Q5:誤嚥性肺炎の死亡率はどのくらいですか?
A5:2025年の誤嚥性肺炎による死亡者数は6万4,396人、人口10万人あたりの死亡率は53.9人です。これは人口全体を分母とする死亡率であり、誤嚥性肺炎の患者が亡くなる確率を示すものではありません。
Q6:高齢者の肺炎を予防するには何が効果的ですか?
A6:年齢や健康状態に応じた予防接種、口腔ケア、栄養管理、基礎疾患の治療、感染対策が基本です。食事中のむせや食欲低下、普段と違う元気のなさが見られた場合は、早めに医療機関へ相談してください。
肺炎死亡率は、2025年の厚生労働省の概数で人口10万人あたり70.4人、死亡者数は8万4,013人となりました。肺炎は死因第5位であり、誤嚥性肺炎による死亡も大きな課題です。2024年から2025年にかけて死亡者数と死亡率が上昇した点も、見逃せない変化です。
ただし、人口10万人あたりの死亡率は、個々の肺炎患者の致死率とは異なります。年齢や性別、地域の数値を比較するときは、人口構成や統計上の条件を確認することが必要です。
高齢者や基礎疾患のある人は、ワクチン接種、口腔ケア、十分な栄養、基礎疾患の管理を日頃から心がけましょう。発熱が目立たなくても、息苦しさ、食欲低下、急な活動量の低下などが現れた場合には、早めの受診が重要です。最新の統計を正しく理解し、予防と早期対応につなげることが、肺炎による重症化や死亡のリスクを減らすための第一歩です。