2025年12月14日に投開票された静岡県伊東市長選挙は、無所属新人の杉本憲也氏が13,522票を獲得し、初当選を果たしました。候補者は過去最多の9人で、投票率は60.54%。元市長の小野達也氏が10,962票、失職した前市長の田久保真紀氏が4,131票となり、杉本氏が市政の立て直しを託されました。伊東市選挙管理委員会の確定資料から、開票結果と候補者別の得票数を整理します。
選挙の背景には、田久保氏の学歴問題、伊東市議会による2度の不信任決議、議会解散を経た市政の混乱がありました。2026年10月現在、杉本市長のもとで行政の信頼回復や子育て支援、新図書館計画の見直しなどが課題となっています。加えて、伊豆高原メガソーラー計画を巡っては、2026年10月に静岡地裁の判決と県の控訴断念方針が明らかになり、地域の将来に関わる重要な局面を迎えています。
【2025年12月14日の伊東市長選開票結果】杉本憲也氏が13,522票で初当選

伊東市長選挙は2025年12月7日に告示され、12月14日に投開票されました。田久保真紀前市長の失職に伴う選挙で、立候補者は9人。市政の正常化と信頼回復が大きな争点となりました。
伊東市選挙管理委員会が公表した確定資料によると、当日有権者数は56,348人、投票者数は34,111人、有効投票総数は33,822票です。投票率は60.54%で、同年5月の前回市長選挙の49.65%から10.89ポイント上昇しました。
当選した杉本氏は13,522票を獲得し、次点の小野氏に2,560票差をつけました。杉本氏の得票は有効投票総数の約39.98%に相当します。9人が競う選挙だったため、当選者が過半数の票を得たわけではありませんが、混乱した市政を前に進めるための新たな選択肢として支持を集めた形です。
なお、投票率については一部報道に60.45%という表記もありますが、伊東市選挙管理委員会の確定資料に記載されている数値は60.54%です。開票結果を確認する際は、公式の確定値を基準にする必要があります。
【候補者一覧と得票数を比較】小野達也氏・田久保真紀氏との違い
2025年12月の伊東市長選には、元職の小野氏、前職の田久保氏、そして新人の杉本氏を含む9人が立候補しました。伊東市の公式開票資料と報道各社の確定報道に基づく候補者別の結果は、次のとおりです。
| 候補者 | 党派・立場 | 得票数 | 結果 |
|---|---|---|---|
| 杉本憲也 | 無所属・新人 | 13,522票 | 当選 |
| 小野達也 | 無所属・元職 | 10,962票 | 落選 |
| 田久保真紀 | 無所属・前職 | 4,131票 | 落選 |
| 黒坪則之 | 無所属・新人 | 2,779票 | 落選 |
| 利岡正基 | 無所属・新人 | 997票 | 落選 |
| 石島明美 | 無所属・新人 | 628票 | 落選 |
| 鈴木奈々子 | 日本大和党・新人 | 399票 | 落選 |
| 岩渕完二 | 無所属・新人 | 309票 | 落選 |
| 大野恭弘 | 無所属・新人 | 95票 | 落選 |
今回の結果を理解するうえで重要なのが、2025年5月25日に実施された前回選挙との比較です。このときは田久保氏が14,684票、小野氏が12,902票を獲得し、田久保氏が1,782票差で初当選しました。投票率は49.65%でした。
12月の選挙では、小野氏の得票は10,962票となり、5月より1,940票少なくなりました。一方、田久保氏は4,131票にとどまりました。ただし、5月は2人の一騎打ち、12月は9人の争いです。候補者数や選挙の争点、投票行動が異なるため、得票数の増減だけで個々の候補者に対する市民の評価を断定することはできません。
注目すべきなのは、前回選挙で小野氏を破った田久保氏が、わずか半年余りで市長の座を失い、出直し選挙でも当選できなかったことです。12月の結果は、単なる首長交代ではなく、学歴問題に端を発した市政の混乱をどう収束させるかという課題に対し、市民が新しい選択をした選挙として位置付けられます。
【田久保真紀氏はなぜ失職したのか】学歴問題から2度の不信任決議まで
田久保真紀氏は2025年5月の市長選で初当選しました。しかし、就任後まもなく、東洋大学法学部の卒業歴を巡る疑義が表面化します。問題は学歴の表記だけにとどまらず、市長としての説明責任、市議会との関係、行政運営の停滞へと広がりました。
学歴問題で確認された事実2025年6月初旬、田久保氏の学歴に疑義を示す文書が市議会議員らに届いたことなどをきっかけに、卒業歴を巡る問題が本格化しました。市が発行した広報紙などには東洋大学法学部卒業とする経歴が記載されていましたが、7月2日の記者会見で田久保氏は、実際には同大学を卒業しておらず、除籍となっていたことを認めました。
この問題で問われたのは、大学を卒業していなかったという事実だけではありません。市長選の際に示された経歴と実際の学歴に食い違いがあったこと、そして、その経緯について市民や議会が納得できる説明を得られたのかという点が、市政への信頼を大きく左右しました。
学歴の食い違いを巡っては、市議会が調査特別委員会、いわゆる百条委員会を設置し、関係者への証人出頭請求や資料提出要求を通じて経緯の解明を進めました。学歴問題について政治的な責任が問われたことと、個々の行為について刑事上の責任が確定したかどうかは、区別して理解する必要があります。
失職までの時系列伊東市議会の決議資料や当時の報道を整理すると、失職までの主な流れは次のとおりです。
2025年5月25日:田久保氏が市長選で小野氏を破り、初当選。
2025年7月2日:田久保氏が記者会見で東洋大学を卒業していないことを認める。
2025年7月7日:市議会が辞職勧告決議を可決。学歴問題に加え、市政の混乱に対する責任が問われる。
2025年9月1日:市議会が田久保氏への1度目の不信任決議案を全会一致で可決。
2025年9月10日:田久保氏が市議会を解散。市議会議員選挙へと進む。
2025年10月19日:市議会議員選挙を実施。解散前の議会とは構成が変わり、再び不信任決議を巡る局面を迎える。
2025年10月31日:2度目の不信任決議案が賛成19、反対1で可決され、田久保氏は失職。
2025年12月14日:出直し市長選で杉本氏が初当選。
地方自治法の仕組みでは、市長が不信任決議を受けた場合、議会を解散する選択肢があります。しかし、解散後に新たに構成された議会で再び不信任決議が可決されると、市長は失職します。田久保氏は最初の不信任決議に対して議会解散を選択しましたが、2度目の不信任決議を回避できませんでした。
この経緯から分かるのは、田久保氏の失職が学歴問題の発覚だけで直ちに決まったわけではないということです。説明責任を巡る対立、議会解散、その後の市議選、再度の不信任決議という複数の段階を経て、最終的に市長の職を失う結果となりました。
【伊東市長選の争点と選挙公約】9人が訴えた市政再建の方向性
2025年12月の選挙では、市政の正常化や行政の透明性だけでなく、物価高への対応、子育て・教育、観光振興、新図書館計画、伊豆高原メガソーラー問題など、地域の暮らしに直結する政策が争点となりました。
静岡放送(SBS)を含む地元報道機関の候補者合同アンケートでは、9人全員が回答し、市長選の争点や図書館計画、メガソーラー事業への考え方を示しました。各候補者の主張には、共通する課題認識と政策上の違いがありました。
杉本憲也氏:公正で透明性のある市政、市民負担の軽減、人口減少への対応を重視。子育て・教育支援や通学費の負担軽減、住民税・国民健康保険税の負担軽減などを訴え、新図書館計画の見直しとメガソーラー反対を掲げました。
小野達也氏:市政の正常化と物価高への対応を重視。これまでの市長経験を生かした生活支援や観光振興を訴え、図書館計画は市民の意見を反映してゼロベースから再考する姿勢を示しました。
田久保真紀氏:改革の前進と成長戦略を主張。新しい図書館の建設よりも既存施設の活用や各地区の図書室・自習室、電子書籍の導入などを重視し、メガソーラー計画の白紙撤回を訴えました。
黒坪則之氏:医療・介護の人材不足や市民病院の立て直し、観光経済の再生を重視。図書館については市役所内の主要施設と駅周辺の補完的なスペースを組み合わせる構想を示しました。
利岡正基氏:観光で得た経済効果を教育・医療・福祉に循環させる考えを提示。図書館は市民の声を基に機能を再設計し、地域に応じた複数配置も検討する方針でした。
石島明美氏:清潔で正直な政治と行政運営を重視。図書館を世代を超えて利用できる公共空間として位置付け、整備を目指す考えを示しました。
岩渕完二氏:市政の正常化と透明化を掲げ、市民の声を直接聞く仕組みや迅速な情報公開を提案。図書館計画については費用を含めた見直しを主張しました。
鈴木奈々子氏:メガソーラー計画への反対と新図書館の建設抑制を訴え、既存施設の活用や観光振興を重視しました。
大野恭弘氏:新図書館の建設を主要な争点とし、商店街に人の流れを生み出す地域活性化策として図書館を位置付けました。
メガソーラーについては、9人の多くが反対を表明しました。ただし、候補者によって、環境や防災上の懸念を強調するのか、裁判への対応を優先するのか、地域の合意形成を重視するのかという違いがありました。賛否だけでなく、どのような法的・行政的手段で対応するのかが重要な比較点です。
また、新図書館計画も大きな争点でした。計画をそのまま進めるのか、既存施設を活用するのか、規模や場所を見直すのかによって、財政負担や市民サービスの形は変わります。市民にとって重要なのは、建設の賛否だけでなく、必要な機能、費用、維持管理費、利用しやすさを含めた具体的な説明が示されることです。
【2026年最新】杉本憲也市長の現在と伊東市政再建の課題
2026年現在、伊東市長を務めるのは、2025年12月の選挙で初当選した杉本憲也氏です。伊東市の公式プロフィールでは第22代市長とされ、同市議会議員を2期務めた経験を持ちます。特定行政書士としての経歴もあり、2025年12月に市長へ就任しました。
杉本市長が引き継いだのは、単に新しい政策を実行すればよいという状況ではありません。前市長の学歴問題に伴う混乱の収束、行政内部の意思決定の正常化、市議会との関係構築、停滞した事業の整理など、行政運営の土台を立て直す必要があります。
2026年1月6日の所信表明では、市政の混乱や停滞に対する謝意を示し、正常化を自身の使命として市政を前に進める考えを明らかにしました。同月には、副市長人事も市議会で承認され、行政運営を立て直すための体制整備が進みました。
子育て支援と市民負担の軽減杉本氏が選挙で掲げた政策には、子育て・教育支援、市民負担の軽減、高齢者の移動支援、人口減少への対応などがあります。住民税や国民健康保険税の負担軽減、通学費の無償化なども公約に含まれました。
一方、選挙公約を掲げることと、制度として実施することは別です。実現状況を評価するには、予算への計上、議会での審議、対象となる市民、開始時期、継続的な財源を確認する必要があります。
伊東市の2026年度施政方針では、保育料の無償化対象を、従来の3歳児以上や住民税非課税世帯の0~2歳児から、0歳以上のすべての子どもへ拡大する方針が示されました。子育て世帯の負担軽減を具体的な制度に結び付ける施策の一つです。
防災、交通、観光を含めた市政の立て直し伊東市が直面する課題は、政治への信頼回復だけではありません。人口減少と高齢化、地域経済の活性化、観光振興、医療・福祉の維持、公共施設の老朽化、日常の移動手段の確保など、長期的な対応が必要な問題が重なっています。
2026年2月の市の施政方針では、同月の降雪による交通網の混乱や、給水管の破損に伴う広域的な断水にも触れ、防災対策の強化と緊急時の迅速な対応を課題として挙げました。市政再建を判断する際には、選挙時の公約だけでなく、こうした日常生活に直結する危機への対応力も見ていく必要があります。
新図書館計画については、田久保前市長が就任直後に入札中止を表明した経緯があり、杉本氏も計画全体の見直しを掲げました。今後は、既存施設の耐震性、建設費、維持管理費、立地、住民の利用ニーズをどう整理し、説明責任を果たすかが焦点となります。
伊東市の歴代市長という観点では、杉本氏は第22代に当たります。市長が交代しただけで市政の信頼が自動的に回復するわけではありません。市民が必要な情報を得られる仕組み、議会との建設的な協議、予算や事業の透明性を継続して確保できるかが、新しい市政の評価を左右します。
【伊東市メガソーラー問題の最新動向】2026年10月の判決と今後の焦点
伊豆高原メガソーラー計画は、伊東市の環境、防災、景観、地域経済を巡る長年の課題です。計画地周辺の住民は、土砂災害などへの懸念から工事に関する許可の取り消しを求めてきました。市議会でも2017年6月の定例会で建設反対決議が全会一致で可決され、伊東市は2018年に太陽光発電設備の設置と景観などの調和を図る条例を施行しています。
伊東市の公式説明によると、2025年10月時点で、事業者は開発に必要なすべての許可を取得しておらず、工事の進捗は見られない状況でした。ただし、工事が進んでいないことと、計画が法的に完全に消滅したことは同じではありません。許可や訴訟の状況を個別に確認する必要があります。
2026年10月15日の静岡地裁判決2026年10月15日、静岡地方裁判所は、伊東市八幡野地区のメガソーラー計画に関連する工事許可を巡る訴訟で、県に許可の取り消しを命じました。訴訟は、住民側が工事に関する変更許可の取り消しを求めたものです。規制制度の変更により許可権限が伊東市から静岡県に移ったため、県が訴訟を引き継いでいました。
静岡朝日テレビなどの報道によると、鈴木康友知事は10月27日の会見で控訴しない方針を表明しました。控訴期限は10月29日で、県は判決を確定させる方向となりました。杉本市長も、早期解決につながる判断として県の方針を歓迎しています。
ただし、ここで注意したいのは、判決によって直ちにメガソーラー計画全体が正式に撤回されたと断定することはできない点です。県は、判決で取り消しを命じられた許可について、申請を受けた段階に戻り、判決の趣旨に従って改めて判断する方針を示しています。今後の行政判断が、計画の行方を左右します。
市政と地域住民に求められることメガソーラー問題では、環境保全や防災上の懸念に加え、法令に基づく行政判断、事業者との法的紛争、住民への情報公開が複雑に関係しています。単に賛成か反対かだけで評価するのではなく、災害リスクの評価、許可の適法性、行政の説明、住民の安全をどのように確保するかを分けて考えることが大切です。
杉本市長にとっても、選挙で反対の立場を示したことだけで課題が解決するわけではありません。県の判断を踏まえた情報提供、住民との対話、関連する行政手続きの透明化を進め、将来の土地利用や地域の安全について説明を続けられるかが問われます。
【伊東市長選に関するよくある質問(FAQ)】
Q1:2025年12月の伊東市長選で当選したのは誰ですか?
A1:無所属新人の杉本憲也氏です。13,522票を獲得し、2位の小野達也氏に2,560票差をつけて初当選しました。
Q2:伊東市長選の投票率は何%でしたか?
A2:伊東市選挙管理委員会の確定資料によると、2025年12月14日の投票率は60.54%です。同年5月の前回選挙の49.65%から10.89ポイント上昇しました。
Q3:田久保真紀氏はなぜ市長を失職したのですか?
A3:学歴問題を巡る市政の混乱などを背景に、2025年9月1日に市議会で1度目の不信任決議が可決されました。田久保氏は議会を解散しましたが、10月31日に再構成された議会で2度目の不信任決議が賛成19、反対1で可決され、失職しました。
Q4:小野達也氏は前回の市長選で何票を獲得しましたか?
A4:2025年5月25日の市長選では12,902票でした。12月の出直し選挙では10,962票を獲得しています。ただし、5月は2人の一騎打ち、12月は9人の選挙だったため、得票数だけで支持の変化を断定することはできません。
Q5:杉本憲也市長は2026年現在、どのような政策を進めていますか?
A5:市政の信頼回復を基礎に、子育て・教育支援、市民負担の軽減、防災、交通手段の確保、観光振興などを重点課題としています。2026年度施政方針では、保育料の無償化対象を0歳以上のすべての子どもに拡大する方針も示されました。個々の公約については、予算や実施状況を確認が必要です。
Q6:伊東市のメガソーラー計画は中止になったのですか?
A6:2026年10月15日、静岡地裁が工事に関する許可の取り消しを命じ、県は同月27日に控訴しない方針を示しました。ただし、計画全体の正式な撤回と、特定の許可の取り消しは別の問題です。県による今後の審査・行政判断を確認する必要があります。
【プロの結論】伊東市政再建は「透明性・財源・実行状況」で評価する
2025年12月14日の伊東市長選は、杉本憲也氏の初当選によって、市政の混乱に区切りを付ける新たな局面を迎えました。投票率60.54%という結果は、市民の政治参加が前回選挙より活発になったことを示しています。ただし、投票率の上昇だけで、市民全体が特定の政策を支持したと結論付けることはできません。
田久保真紀氏の失職までの経緯から得られる教訓は、首長にとって説明責任と行政への信頼が不可欠だということです。市長の判断は、予算編成、公共施設の整備、職員の業務、地域経済など、幅広い市民生活に影響します。説明不足や議会との対立が長引けば、政策の実行そのものが停滞するおそれがあります。
今後、杉本市政を評価する際は、次の3点を基準にすると、選挙時の印象に左右されずに進捗を把握できます。
透明性:重要な政策や行政判断について、根拠、費用、経過が市民に分かる形で公表されているか。
財源と持続性:子育て支援や税負担の軽減、新図書館計画などが、財源や将来の維持管理費を含めて検討されているか。
実行状況:公約が予算や制度に反映され、実際に市民の暮らしの改善につながっているか。
2026年の伊東市政は、信頼回復を掲げる段階から、具体的な成果を示す段階へ移りつつあります。メガソーラー問題や新図書館計画、子育て・教育支援、防災対策など、個別の課題について行政が根拠を示し、市民や議会との対話を継続できるかが重要です。
伊東市長選の結果を理解することは、単に誰が勝ったかを知ることではありません。失職に至った経緯と選挙で示された民意を踏まえ、次の市政がどのように信頼を取り戻し、政策を実行するのかを継続的に確認することが、伊東市の将来を見極めるうえで最も重要です。